♪楽譜ってナニ?
演奏するうえにおいて楽譜は不可欠です。でもそこに書かれている音符や強弱記号、表情記号やテンポ記号などにどんな意味が込められているのでしょうか。最古の楽譜と思われるグレゴリオ聖歌(9世紀から10世紀頃)には音符が並んでいるだけで、拍子や小節の概念はなかったのです。
現在では音符どおり音を出すとなんとなく曲らしくなりますが、どんな曲なのか良く分からないこともあります。楽譜には言語よりも伝えにくい、理解しにくい多くの記号が書かれているだけなのです。それらの記号は独立したものではなく、関係性の強いものです。
例えば、速度記号でいいますと
「快活に」と習った「Presto」はイタリア語では「早く終わる人」、「すぐに」、「間もなく」、「迅速に」の意味です。
同様に 「活発に」と習った「Vivace」は「頭の回転の良い」、「鋭い」、「鮮やか」
「速く」の「Alleglo」は「明るい」、「嬉しい」、「派手な」
「中くらいの速さ」の「Moderato」は「適当」「程良い」
「歩く速さ」の「Andannte」は「散歩をする」、「ぶらぶらする」
「ゆるやかに」の「Adagio」は「くつろぐ」、「格言」
「幅広くゆるやかに」の「Largo」は「だぶだぶの服を着た人」、「幅広い」、「ゆったりと」の意味があります。
そして時代や民族によって生活リズムや歩く速さは変わってくるのではないでしょうか。当然速度記号の感じ方は変わってくるのが当たり前と考えるべきでしょう。
イタリア語の意味を知ると演奏も変わってきそうですね。
そして、強弱記号も同じように
「フォルテ」は「強く」と習いましたが、「雄大な」、「エネルギッシュな」、「心が広い」等とも、
また、ピアノは「弱く」だけではなく「優しい」、「可愛い」、「密やかに」、「静寂」等の意味を持っているのです。
だから楽譜の冒頭に書いてある「副題」や表情記号によって音符の扱いが変わってくるのです。
国語の先生に「本を読むときには『文字の多様な意味や行間を読め!』 」といわれませんでしたか?音楽も同様に音符の奥にそして音符と音符の間に何があるか探していく必要があるのです。
作曲家は自分の思いすべてを楽譜に書き込むことはできません。書き込めないからこそ演奏家は作曲家の時代背景、心情とともに多くの記号から汲みとっていくことが最初の作業となるわけです。だから同じ曲でも演奏者が異なれば表現が変わってくることもあるのです。(同じ演奏家でもその日の体調や、お客様の反応で変わることもありますが・・・)
♬演奏するには演奏者の「考え方、捉え方、心」を一つにし、曲を理解し同じ方向を向くことが重要です。
♬音符は高さや大きさよりも音から次の音との間が大切なんです。そうすれば音符の長さに気持ちがこもるのです。
♬演奏家はそんな記号を基に感情や、情景、理想や思想など歌い上げています。
私はこれからもそんな心を表現する音楽の世界を楽しんでいきたいと思っています。
♪ 音階は誰が作ったの?
ドレミ…という音階は誰が作ったのでしょうか? 音階を世界で初めて作り出したのはピタゴラスだと云われています。紀元前580年~500年頃とされています。ピタゴラスは鍛冶屋の鳴らすハンマーの音に美しく響き合う音とそうでない音を発見しました。中でもハンマーの重さが2:1と3:2のときに特に美しいことを発見し、神の声を聴くため音階の研究に没頭したことから音階が作られたようです。
♪なぜドレミと云われるの?
ではドレミ…という呼び方はどこから来たのでしょうか?それはラテン語の聖歌「聖ヨハネ賛歌」の各節の頭文字「Ut Re Mi Fa Sol La」を使って音を示す言葉とし、これを使って唄を歌う「ドレミ唱法」が確立したことから始まりました。しかし6音しかなかったものが17世紀頃にSiを加えて1オクターブになったと云います。なお、Utは発音し難かったため主(Dominuas)からDoになったとのことです。
♪ドレミは世界共通?
「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」というのはイタリア語の読み方です。
日本語では「は・に・ほ・へ・と・い・ろ」が本来の表記です。
英語圏では「C・D・E・F・G・A・B」と表記します。
ドイツ語では「C ツェー・D デー・E エー・F エフ・G ゲー・A アー・H ハー」です。
(ドイツ語でシの音をHとするのはBベーにするとB♭になるからと聞いていたのですが、現在はBビーとB♭ベーを使い分けているのだとか。)
♪ヨナ抜き音階って?
日本の音階はヨナ抜き音階と言われています。
ヨナ抜き音階とは、その名の通りⅣ(ファ)とⅦ(シ)の音を抜いた五音の音階のことです。
つまり、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド が ド・レ・ミ・※・ソ・ラ・※・ド になるわけです。
日本の明治時代の曲にはこの音階が多いと言われています。
君が代なんか典型例です。一度Ⅶ(シ)が出てきますが、それ以外はすべてヨナ抜きです。
♬演歌は現在でもヨナ抜き音階が主流で、アイドル歌謡、フォーク、ニューミュージック、J-POPの曲のなかにもヨナ抜き音階を使って「日本風」を意識しているものがあります。
♬ このヨナ抜き音階、実は「螢の光」や「故郷の空」などスコットランド民謡の音階と一緒なのです。何故でしょうね…。知人の中学校音楽教師は「日本の教科書に多く使われたから日本人が哀愁を感じ、日本の音階につながったのだ」と言っていましたが……(キット違いますネ。)
♬ ちなみに沖縄地方の琉球音階はレとラを除いたド・ミ・ファ・ソ・シ・ドが一般的な音階と言われていますが、本来はレの音を入れたドレミファソシドが正規の音階となるようです。
(民族音楽にはヨナ抜きのような5音階が多いと云われています。 好みの音楽は人類共通? なら何故西洋音楽では7音階?)
♪なぜドはAではないのでしょうか?
音階の最初は「ド」ですよね?だったらローマ字の最初の「A」が使われていいんやないでしょうか。何故「ド」が「C」になったのでしょうか?
答えは「ラの音からABCが名付けられた後にCを中心と定めたから」。というのが定説らしいです。
【基準になったのは中世の合唱隊】
お話は楽譜のカタチが今の五線に落ち着く遥か昔まで遡ります。
舞台は11世紀頃の中世ヨーロッパ。当時、普通の男性の出せる最低音は低いソの音だったと言います。その最低音をγ(ガンマ=G)と呼びました。そして、その1つ上のラの音から順番にABCと名前を付けていったのだそうです。すると「γAB“C”DEF」となります。 Cの音が真ん中になるので、Cの音が合唱の際の基準音になったのだとか
【Cの記号とGの記号とFの記号の登場】
11世紀の楽譜はまだ線が4本でした。そして4本ある線のどれが“ド”か、演奏者に示す必要があったのです。その記号として、Cの形をした「ハ音記号」が考案されました。
こうして西洋音楽はCを中心として発展していきました。そして楽譜の線が5本まで増えた17世紀後半。Cを中心として上下に5線を配置する楽譜の書き方が考案されました。ここまできてようやく、有名なト音記号とヘ音記号が登場するのです。
つまり、まん中のCの5度上であるGの音を示す記号「ト音記号」を上の五線に。そしてまん中のCから5度下であるFの音を示す「ヘ音記号」を下の五線に。こうしてできた2段の楽譜が現在ピアノの楽譜で使われる大譜表の起源 です。
今ではハ音記号ってちょっとマイナーな感じがありますよね。でもト音記号やヘ音記号よりもずっと古くからある記号だったんですね。
【Cはまん中の音】
もう一度まとめると、Cは「始まりの音」というよりも「まん中の音」として扱われてきたということですね。 なが~い歴史があったんですね。
♪チューニングの音が”ラ (A)“の理由♪
オーケストラはなぜ「ラ」の音で合わせるのでしょうか。
赤ちゃんが生まれて一番最初に泣いた時……つまり産声が、なんと、440Hzなんだとか。理由はまだ解明されていないようですが、哺乳類全般でそうだって話すらもあります。
この他にもいくつか説があるので、そのうちの一つをご紹介します。
今から2600年ほど前、古代ギリシャで当時使われていた弦楽器に張られていた弦の中で、一番低い音の弦を「A」と名付けました。それが今の音でいう「ラ」の音です。
一番低い音、つまり、始まりの音をアルファベットの最初の文字にしたのですね。これがいつのまにか基準の音として使われるようになったようです。
その後は使われているどの弦楽器にも「ラ」の弦が張ってあり、そのまま基準音として使われ続けています。
♬1939年に、国際会議で、ラ (A)の音を周波数440ヘルツにすると決められました。
♬17世紀から18世紀にかけてのバロック音楽の時代は、A=415でした(諸説ありますが)。415Hzというのは現在のA♭とほぼ同じ音、つまり現在よりも半音低かったわけで、バッハなど古い音楽を演奏するときは現在でもこれを用いることが多いのです。絶対音感を持っている人は、楽譜に「ド」と書いてあって、自分も「ド」を弾いているつもりなのに、出て来る音は「シ」なので、「気持ち悪い」と感じたりパニックになってしまうわけです。
♬現在、オーケストラで用いられる「ラ」の音は440ヘルツだけでなく442ヘルツ、445ヘルツなどさまざまです。これは、音を高くすると音色が明るく華(はな)やかになるからだといわれています。
♬おなじみのNHKの時報は、基準ピッチを正しく守ったものになっています。
♬吹奏楽などではチューニングを「シ♭(フラット)」の音で合わせたりします。これは、吹奏楽ではクラリネットやトランペットなど「シ♭」の音を基準としている楽器が多いため、音を合わせやすいからです。
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