演奏家の裏話② & 客席でのトラブル

♪ ヨーロッパのオーケストラ 

 演奏会当日は本番前にリハーサルを行います。

 日本ではリハーサルの後1~2時間で本番を迎えるのですが、本場ヨーロッパではリハーサルの後に自宅へ帰り、食事をして仮眠をとって本番を迎えることがあるらしく、本番にメンバーが揃っていないことがあるそうです。慌てて連絡をとると本人は熟睡中だったってこともあるようです。  お国柄ですかね・・・

♪ リハーサル(全体練習) 

 私たちアマチュアの多くは演奏曲を決め、楽譜を配り、指揮者の指導の下で

半年から一年かけて練習を重ね演奏会を迎えます。市民団体の多くは全体練習

が中心で、個人練習の時間はなかなか取れないのが現状です。

 さて、年間100から150ほどの演奏会を開催しているプロのオーケストラは

どんな練習をしているのでしょうか?彼らには年間スケジュールが知らされて

おり、いつどのような曲を演奏するのかが知らされています。そしてリハーサ

ル(全体練習)は通常1~3回で本番に臨みます。時には複数公演のリハーサル

が1日で行われることもあるそうです。本邦初演や指揮者が異なる場合には回

数は増えることもあるようですが、リハーサルでは指揮者の意図を理解し、奏

法を合わせることが中心になります。とてもハードな練習日程ですね。

♪ 指揮者がいなくてもオーケストラは演奏できる? 

  指揮者が変わると音楽も変わるってどういうこと?と質問されますが、指揮者の音楽に対する理解力や音の好み、人生経験などから音楽は変わっていきますが、そもそも指揮者なしでもオーケストラは演奏できるのです。

 では、どうやって息を合わせているかというと、コンサートマスター(指揮者の左側、客席に一番近いヴァイオリン奏者)が基準になっているのです。

 コンサートマスター(コンマス:男性の場合)やコンサートミストレス(コンミス:女性の場合)は弓の動きや、目線などで団員に伝えているのです。オーケストラの中の最も重要なリーダーということです。(だから当然ギャラも高い。)

 指揮者の動きが気に入らない、伝わりづらいなんていう場合に、オーケストラは指揮者を見ないで、コンマスに合わせているプロオケもあるとかないとか。あるとかあるとか

♪ 消える指揮者の謎 

 これはあまりにも有名な話みたいなので、ご存じの方も多いと思います。

 とあるオケが「チャイコフスキーの第5シンフォニー」を演奏していたときのことです。第4楽章のマーチ風のところで、突然、楽員の視界から指揮者が消えました。「えっ」と楽員は大慌て。

 実は、指揮者は指揮台から客席に落ちてしまったんです。この大指揮者は指揮台の上で縦横に動き回ることで有名で、勢い余って後ろに落ちてしまったのでした。そして怯むことなく、下から指揮をしながら再登場した、とか。

 この話、N響の演奏旅行の時のことだそうですが、同じ話が日フィルの演奏でもあったようです。ただし、「悲愴」シンフォニーの第3楽章ということでしたが・・・どうも何回も同じようなことがあったようです・・・真実を検証していないのでわかりません。

 その大指揮者の名は・・・故山田一雄氏だそうです。

♪ 居酒屋トーク 

 英語やドイツ語、イタリア語など駆使し、暗譜力(譜面を覚える力)も高く、絶対音感(救急車のサイレンや缶の転がる音までが音名で聞こえる!)を持ち合わせる驚異的な音楽家たちたち。でも「天は二物を与えず」かな?やっぱり人の子?インターネットにこんな音楽家が紹介されていました。 

(きっと一部の音楽家!?)

 「月極駐車場」を「げっきょく」と読むなんては基本中の基本、任天堂DSの「脳トレ」で、108から9を引いていくトレーニングをやった美人ヴァイオリニストが最初の108-9で固まったままゲームオーバーになった話など、楽しい話が出てきました。

ある演奏家のレッスン風景。            

 先生 「そこの部分、きっとお前はいずてきに大袈裟に表現しているんだろうけど、もっとこうしたら?」

 生徒 「いずてき・・・・?ですか?」

 先生 「そうだよ、い~や悪くはないんだ、だけどね」

 生徒 「もしかして、・・・・・いとてき(意図的)ですか・・・・・・?」

 先生 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

♬ 口止めをする演奏家Aさん。

 Aさん 「これ、内緒で頼むよ!絶対にクレジットな!!」

 Bさん 「シークレットでしょ・・・・・」

定食屋に入った演奏家が注文します。

 「すいませ~ん、なましょうがやきください!!」

 正解:生姜焼き

 漫才のネタのようですね。

 え~!笑い話やない。貴方も同じような事あるって?

★次は演奏家の楽屋ばなしです。

本番用の靴を忘れて。たまたまスニーカー履いて現地まで行ったものだから、ドレスの下がスニーカーだった事は有りますが…それは序の口ですよね。そうですよね?

あれかな?…高校の管楽器の実技試験で、同門の意地悪先輩から「本番前にCCレ*ンを飲むと上手くいく」と騙され(!)て、その先輩が丁寧にも差し入れて下さったその飲料を試験前に一気飲み。試験中、あの酸味の刺激で唾液が過剰分泌されるわ、炭酸でゲフっっとなるわで…一人ヒヤヒヤしながら…。の話?いや、これじゃないっぽいですね。

えっとそれから…演奏で大きなアクションが必要な箇所が有り。「ff!!」の瞬間にブラのホックが外れて(!!)…いや、誰にも気付かれませんでしたし、外れたところで見るほどのものも無いんですがね、焦った事も有りますよ。

オペラ歌手の皆さんが本番で歌詞を度忘れして、あまりに適当な歌詞を創作して歌っちゃってるのを見て、秘かに内心笑っているのは、日常茶飯事です。「涙が頬を…注ぐ!?」とか。

 ピアノのコンサートでは傑作な失敗があります。
前に弾いた人の椅子の位置が片寄り過ぎて、弾きにくくてしょうがない。

 そこで舞台から「やり直しね」と言って、最初から弾き直したことがあります。

 高さは調節しても、左右を調節するのを忘れていました。
 入場無料のコンサートだからやれる事でしょう。友達は笑っていたそうです。

オペラ歌手の演奏会で伴奏をさせて貰った時…コンサート本編の楽譜は揃っていたのですが、アンコールでやる3曲分の楽譜を、全部忘れた事が有ります。演奏会では初めて取り上げる曲だったのですが…「この曲は私共ユニットの、十八番でございます!」とばかりに、アンコール3曲は暗譜で演奏しました。冷汗ものでした。

オペラ公演でズボンが下がっちゃったのは…私ではなく、私の友人です。喜劇が本当の喜劇になりましたから、あれは失敗では有りません。ある意味、大成功です。観客が沸いてましたから。

♪ 音楽家のプロフィール

 よく、コンサートなどに行ってチラシを見ると演奏者の「プロフィール」が書いてありますよね。多くの場合はこのように書いてあると思います。

 『大和撫子』                                                         

3歳からピアノを始める。Sittoku音楽大学ピアノ専攻卒業。卒業後に渡仏し、フランスの××大学を卒業。Sittokuコンクール金賞、Sittokuジュニアコンクール第1位など、数々のコンクールで入賞。Sittoku新人コンサートに出演。ピアノを◇◇、〇✖、▽△の各氏に師事。Sittoku音楽協会会員。ソロ、アンサンブル、後進の指導にと幅広く活動している。リストに対する思い入れが強く、独自のリストコンサートを一年ごとに開催。

 みたいな。まぁだいたい盛ってるんですよね!

  特に「大学の卒業」「コンクール入賞経歴」のような調べればウソだと分かるもの以外は盛ってる可能性が高いのです。例えば師事した先生など、数回しかレッスンしてなくてもあたかも長く習ったかのような。活動も言うほどしてないのに書いてみたり。
 とは言えプロフィールでお客さんに向けて、あるいはお客さんの中にいるかもしれない仕事関係の人に向けてアピールしなければなりません。書けるものは書かないといけないんです。

 ウソじゃなきゃいいんです。ウソじゃなきゃ。…週刊誌の思考回路ですねこれ。

♪ 演奏会の客席でも

 演奏会場は客席でもトラブルはあります。

 まずは私の失敗談です。

その1

 ピアノ奏者三人による「ピアノ協奏曲の夕べ」というコンサートに尊敬するⅯ先生がトップバッターとして出演される日の出来事です。

 職場を定時に飛び出し、電車に飛び乗り、寒風の中を走ってホールへ。何とか間に合うことができました。ホールでは場内の暖房が冷え切った身体を優しく包んで迎えてくれ、座席を確認しているうちに開演になりました。演奏は期待通りの優しいピアノの調べで、ウットリと聴き入っていました。しばらくして突然拍手の音が……。エ!何があったんだろう?そうです私は熟睡していたのでした。エ~何で高いお金を払い、寒い中走って寝に来たのだろうか(ショック)。その後二人の演奏も記憶には無く、一人寂しく帰ったのを覚えています。

その2

 これは後輩の演奏会の話です。

 彼女はフルーティストとして初のリサイタルを開催するというので、応援に駆け付けました。500人ほどの客席は満員のお客さんでした。

 私も彼女の瑞々しい音と会場のエネルギーから元気をもらった素敵な演奏会だったのですが、その演奏会ではなかなか演奏に集中できませんでした。それは私の目にフルートに反射した照明が常に飛び込んできたからなのです。客席ではあまり身体を動かすことはできず、顔を下にして視線を逸らすのが精一杯でした。演奏者に責任はないのですが、真正面に居て演奏者の姿を見られないなんて、こんな経験は初めてでした。

 次はインターネットで出ていたお話です。経験者は案外多いかもしれないですね。

その3

 今でも、恥ずかしさで、冷や汗が出てくるのが、オペラ「ポリス・ゴドノフ」を見に行ったとき、群衆のコーラスの場で、演出のせいか、指揮者の考えか、最高に盛り上がったときに、ほんの少し、動きが止まって、「間」があいたのですね、ハハハ、私は、もう感動のあまり、というか、「知ったかぶり」がしたかったのか、終わったと思って、思わず、拍手をしてしまいました。シーンとした空間に、響いたのは私の「パチパチ」音だけ……あれは、本当に恥ずかしかった……赤面の限り。まあ、ほかには、若いときは、けっこう、「通ぶって」いたのか……でも感動したのは確かなんですけれどね、「ブラボー」誰よりもはやく発したり、拍手なんて、真っ先にやったものです……今思えば、バカなことをしていたものですね。今は、さすがに、そんなことはしません。

 迷惑行為は、もう数えるほど……それこそ、コンサートに行くのがいやになるくらいありますよ。シューマンの「ライン」聴いていたとき、隣の男が、オケと一緒になって、メロディ歌い始めた、「あんたの歌聴くために、高い金払ったんじゃない」って、腹立ちましたね……ちょっと、酒臭かったですよ。

 風邪ひいているのか、咳ではなくて、咳払いを平気で演奏中に連発していた隣の爺さん・・・

 しーんとした弱音の中に鳴り響く携帯電話の呼び出し音……本当に、こんなことがあい続いて、コンサート恐怖症になったくらいですよ。(笑)

その4

 二日酔いではありませんが、コンサートの休憩時間に酒に弱いのについワイン一杯飲んじゃって、休憩後のコンサートのことは覚えてませーんというのがあります。すっかり寝てしまいました……。あれ以来、休憩時間のアルコールは禁止です。

 そういえばあるコンサートに本当の日にちより一日前に出かけちゃって、会場入り口で帰されちゃったこともあったわ。あほだったー

(私は後輩の演奏会に招待され菓子折りを持って行ったら演奏会は前日だったことがありました。後輩に言い訳のしようがありませんでした。菓子折りは家族の土産になりました。)

その5

 大阪フィルの演奏会で楽団員の方の顔パスで横から入れてあげるよって話があって、わーい♪ラッキー!ってんで、早めに行ったんはよかったんだけど、ゲタのまま行っちゃったんだ。

 んで、その楽団員の方に大叱られ。でも入れてくれたよ、ゲタ脱いだらって条件でね。 しかたないんで、手でゲタぶら下げてハダシで演奏会聴いた。でもその後、二度と声がかからなくなっちゃった(>_<)

その6

 私は大ホールの前方。ど真ん中の席で 観ていて、二日酔いで 気分が悪くなり 演奏中 途中退席した事が あります。演奏家の皆様、他のお客様に 大変なご迷惑を かけ、高額チケットでしたが席には戻れず、 今でも思いだすと 冷や汗が出ますね~。あの恐ろしさは 一生のトラウマです。
 それ以来 席は 後方通路側、 多少の体調不良があったら、数万の高額チケットでも 行くの あきらめてます。

  あと他の客で、ピアニストに花束渡すため走って檀上に駆け上がり渡したとんでもない男がいました。暴漢かと皆、一瞬凍りついた緊張感漂う演奏会、

 あぶないヤツが いるもんですね~~

 どうです? 演奏会で演奏者が音を外すなんて序の口。ステージの奥から舞台の上まで演奏会場はハプニングだらけ。

 これってプロ、アマ関係ないようですね。

♪  クラシック音楽のコスパ悪い話 

 一人の演奏家を育かかるのでしょうか。楽器代だけでなく、先生へのレッスン代、音楽以外でも語学費用に留学費用など、クラシック音楽に対するお金の話になると、とたんにセレブ羨望じみた、いやみな雰囲気が出てきます。たしかにそこだけを見ると、コスパ悪いと言われても仕方がないのかもしれません。

 特に演奏家は、幼い時から毎日毎日練習を重ね、ほぼ人生のすべての時間を音楽とともに歩んできたと言っていい。それでもプロの演奏家になれるのは、ごくごく一部なのです。さらにプロになっても、そのスキルと音楽的な才能を日々研鑽し続けている。まったく頭の下がる思いです。

 しかもプロ奏者の全員が、かけてもらった費用を回収できるわけでもないのにも関わらず。

 コスパ悪い。確かに。

  ではなぜ非効率的で費用対効果の低い、西洋の昔から続くこの音楽芸術分野が、今も東洋の端っこで継承され続けているのでしょうか。そこには、「支出した費用に対して得られた満足度の割合」だけで語れない価値があると考えられるのではないでしょうか。

  クラシック音楽に魅了され、演奏者になりたいと思う人々、作曲家、そして観客。それらすべての人々が、音楽から愛や希望、勇気等を得、人としての幅を広げることができるからに他ならないのではないでしょうか。

  クラシック音楽は芸術です。費用対効果だけでは語れない分野なのです。興行収益、法人運営や音楽教育費用の業界的な改善点はあるでしょうが、そのプライスレスな人々の思いを、今はまず、多くの人に共有してもらえたらと思っています。


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